2020年01月15日

奈落

昨日 衝撃的な本を読んだ。

TVなどでおなじみの古市憲寿さんの本です。
2作目の 『百の夜は跳ねて』(新潮社、2019年)は芥川賞候補作でした。
古市さんの本は 今回 3作目をはじめてよみました。

タイトル 奈落 ナラク
古市憲寿/著 
東京 新潮社
出版年 2019.12

内容(「BOOK」データベースより)
17年前の夏、人気絶頂の女性シンガー・香織はステージから転落し築き上げてきたものをすべて失った。残ったのは全身不随の身体と鮮明な意識、そして大嫌いな家族だけ―

これ以上怖ろしいことが、この世にあるだろうか。

ホラー小説ではありません。

奈落というのは ステージや舞台などにある 床下の空間のこと。
本来の意味は地獄。

家族から独立して暮らす 大人気歌手だった 香織が奈落に落ちて 植物状態になったということから話がはじまります。
最初は 単に軽い闘病ものかと思いきや だんだん 薄気味悪さというか 香織の恐怖が伝わってきてもどかしくて
いらついてきてしまいました。

くわしくは読まないとわからないでしょうが
これは 人間としての恐怖です。
オカルトなどではありません。

大嫌いな家族というのが はじまりです。
家族はどう対応するのか・・・。
突然の事故。舞台の奈落に落ちて 目覚めたときは 身体は動かず意思表示もできず。
ただ 意識はあって なにもかもが聞こえる。

高校教師だった聖人君子の父。
折り合いが悪かった姉。
お互いきらいだった 母。
好きだった彼氏。
ライバルの歌手。

みなそれぞれ登場して 自分を語るのだが
メインは香織の意識。

聞こえているのだが なにひとつ意思表示できない状態は 地獄に等しい。
見えてくるそれぞれの 人格や行動。
救いようのない 壊れた家族。


そんな地獄のなかで生かされ続けている香織。
孤独の底から 見ている世界は 恐怖そのものです。
孤独な歌姫と、最も醜い家族の物語です。

香織の立場になって読めば これ以上の恐怖はないですね。

単なる 小説かと思えば 奥深く心の中に語り掛けてくる何かがある。
それが 恐怖。

この本を読んでいて 知り合いのことを思い出しました。
脳こうそくで 倒れて やはり 意思表示もできなくなり寝たきりのまま入院中のとき
見舞いに行った 母の前で 倒れたおばさんの夫が 言ったことば
「こんな風になるなら いっそ死んでくれたほうがましだ」
それを聞いて 母は
「そんなこと言うもんじゃない。」とたしなめた。
すると おばさんの目から 涙がぽろりと垂れてきた。
そんな話です。
医者の話によれば
意識がなくなっても 臨終の間際でも 人は最後まで 聞こえているらしいですね。
深い眠りについていて 目覚めなくても 語りかけることによって意識が戻る場合があるということで
枕元で 大きな声で語り掛けてくださいと 言います。

意思表示できないだけで 聞こえているのだから
不用心に 不愉快なことはいうべきではない。
そういうことです。

思えば 障害のある人も 理解はできていてもただ単に どう表示していいのか
どう言葉にしていいのかがわからないだけなのかもしれません。
決して 見下したり 差別的なことはしてはいけません。

本の最後のほうに
ある有名な物理学者の言葉として 書かれていた言葉があります。


[過去と現在と未来の違いは しつこく続く幻でしかありません」
アインシュタインが有名な手紙の中で 書いた言葉です。

時間の流れや変化は幻であり 宇宙の一筋の時間の流れとして整列しているわけではない。

そういう意味だそうです。

これまた 心に残った一文です。

奈落という言葉が 深くつきささってきます。
ある意味 衝撃的内容で ぞぞっと恐怖がわきあがるそんな 本でした。

奈落とは やはり 地獄だった。
タグ:読書
【読書の最新記事】
posted by うめのはな at 09:14| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書
この記事へのコメント
古市憲寿さんてそんなのを書く人なんやね。
人間の深層心理と言うか心象と言うか、そういうのが読んでて一番怖いね・・・
推理小説が好きだから松本清張とか森村誠一の本は
昔たくさん読んだけど、心理的なものを言葉で読むと怖くなってきます
その本読みたくなってきたなぁ〜。
長い事まともに読書してませんからね(;^_^A
うめのはなさんはほんとに読書家やね〜
目は疲れないのかな?・・・
Posted by パセリ at 2020年01月15日 21:58
芥川賞“候補作”なら読んでもいいかなぁ と思いますが
今まで芥川賞作品を読むのには躊躇しています
“芥川龍之介”は好きな作家ですが どうしても芥川賞作家はだめです
変な話なんですが、、、、
僕がまだ高校生の時に読んだその年の芥川賞授賞作・・・(著者G・S)
喜び勇んで街の本屋さんに飛び込んで買い求め、早速読んでみたものの
全然頭に入ってこないのです、読んでいる最中から言葉の意味が空中分解されていくようで
頭にと言うよりは身体の皮膚が受け付けない状態で
「これは無理だわ」と思いました、そして二度と芥川賞の本は読まないと決めたのです
(少ない小遣いで他に買いたいレコードが有ったのですが)
芥川賞の本は多分読んでいないはず、きっと相性の様なものがあるのでしょう
「古市」さんはいったいどうなんでしょう
“衝撃的”な小説よりは“感動的”な小説を読みたいのですが
心地よい感動を与えてくれますでしょうか?

今読書中・・・「蜜蜂と遠雷」これは間違いなく感動ものでしょう
数ページ読んだだけで読み終えた後の感動がそれとなく推察できる方がいい
(今、本屋大賞受賞作品を順次読んでいます)
Posted by さんほ at 2020年01月15日 23:34
パセリ さん

読みやすい内容ですよ。むずかしくはありません。
ただ 自分に置き換えると じわっと恐怖が・・・。
人間の本質を見ているようで 気分はよくないです。体調のいいときに 読むことをおすすめします。

わたしもどちらかと言えば推理小説が好きです。
ミステリー大賞とかそういうものを好んで読みます。松本清張さんは 大家ですが いかんせん少々設定が古くてね。でも 面白いね。

目は30分もすると疲れるので 休みながら読んでいます。
Posted by うめのはな at 2020年01月16日 06:33
さんほ さん

芥川賞昨夜決まりましたね。
古市さんは昨年度の候補で 奈落 ではありません。とても読みやすいので 候補になならなかったかなぁ〜読後 心地よくはないです。恐怖です。

芥川賞の本って 難解で何書いてあるのか よくわからなくて 読みにくくて わざとそういうの選んでいるのじゃないかと思います。「純文学」ってそういうものなのかしらねー
私も ほとんど読みませんよ。

「奈落」は衝撃的であって 「感動的」ではないです。感動ものなら 別のものがいいかも。
本屋さん大賞のものは 感動ものが多いですね。

「蜜蜂と遠雷」これは名作ですね。直木賞はいいもの選びますね。 スピンオフ小説「祝祭と予感」も読みました。
Posted by うめのはな at 2020年01月16日 06:43
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